アイルランド留学16-2 「Henrietta Street 〜後編〜」

ヴィア・フランチジェナ

 昼からはファティマとHenrietta Streetに行くことになった。フランソワも誘ったけれど、彼は午後からも授業があったので来れなかった。軽く腹ごしらえをすると、僕らはHenrietta Streetに向けて歩き出した。

 学校から歩いてもそう遠くないと聞いていたのだが、実際は意外と遠かった。30〜40分は歩いただろうか。Henrietta Streettとは最も古いジョージア調の建物が立ち並ぶエリアであると同時に、一昔前のアイルラン人の暮らしを知ることのできるミュージアムにもなっている。

 歩くことに疲れた僕とファティマだったが、Henrietta Streetの趣のある建物を目にすると疲れも忘れていしまった。今ミュージアムとなっている建物は見るからに古く、中の空気はしっとりとしていて重たかった。

 受付で申し込みをすませ、待合室で待つこと数分、ツアーは始まった。僕らはガイドさんに二階へと案内された。移動するたびにツアーガイドさんが各部屋にまつわる話をしてくれるのだが、1割ほどしか理解できなかった。

 ツアー中に時折上映される当時の映像から察するに、この家にはもともと貴族が住んでいて、たくさんの召使を雇い入れていた。暮らしはとても裕福だったらしい。だが、時代が変わり一般の人々が住むようようになると過剰な数のダブリン市民が押し寄せた。

 すると衛生環境が悪化。多くの病に見舞われたりより貧乏な暮らしを強いられた当時の様子を再現した部屋には、確かに悲壮な雰囲気が漂っていた。

 狭い部屋に大人数で暮らし、週に70時間も働いて、食べ物はわずか。そこに希望はあったのだろうか。

 僕らは今に感謝しなければならないのだと感じた。

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