アイルランドに来て5日目。徐々にではあるが、ダブリンでの生活にも慣れ始めている。何事にしても”慣れ”は必要だと思うが、それにより失われるものもある。アイルランドに来たばかりで、右も左も分からなかった時の鮮烈な刺激が、次第に薄れてきたように感じ始めていた。
今朝は6時半に起床。日本の友人と連絡を取り合った後、シャワーを浴びた。ホームステイ先は共用ユニットバスだったので、夜の混雑を避けて朝シャワーを浴びることにしていた。
ベンには悪いが、今朝は彼を待たずに早めに出発するつもりでいた。もう遅刻はしたくないし、早めに行って少し勉強したかった。定番になりつつあるヌテラチョコを塗った食パンとコーヒーの朝食を済ませると、そそくさと家を出た。
学校に通い始めて驚いたことが一つある。朝のLUASだ。僕が乗車する時ですら満員に近いのに、各駅に停まる度に、次から次に人が乗ってきて、それはもうギューギュー詰めの状態だった。しかも手すりがあまりなく、どうにか踏ん張り自力でバランスを取らないといけない。僕にとって、学校の授業もそうだが、朝のLUASもまた戦いの場だった。
今日は珍しく天気が良かったので(ダブリンは大抵曇っている)、歩くととても気持ちが良い。朝の爽やかな空気を、胸いっぱいに吸い込みながら登校した。
8時半、学校に到着。一番乗りだと思っていたが、校内にはすでに多くの生徒達がいた。皆勉強熱心なようだ。自分のクラスには一番乗りできた。すぐにフランソワとエステルも現れる。どちらも心優しきフランス人だ。
授業前に、二人と少し話ができた。その中で、僕は”自分を表現する”ことより”相手に質問する”時間が長いことに気づいた。自分の主義主張ができないのは、英語力に自信がないのと、そもそも”自分の意見”を彼らほど持っていないことが原因かもしれない。
僕が二人に質問したり意見を求めると、二人は必ずと言ってよいほど、彼ら自身の意見を返してきた。自分で考える、それを相手に伝えるという習慣が身についているようだった。僕も二人を見習って、聞くだけではなく自分の意見を表現できるよう意識を変えなければ。
こと授業では僕のその弱点がより顕著に出てしまう。僕らのクラスでは、常に自分の意見を英語で発表しなければならない。僕はどうしてもそれが苦手で、まごつく度に笑われたり、からかわれたり、だいぶ恥ずかしい思いをした。先生は突然名前を呼んで意見を求めてくるので、授業中は常に緊張していた。道は険しいが、恥ずかしい思いなくして、成長はない。どんどんミスして、堂々としていよう。そう思うことにした。

放課後は、街中をぶらつき、グラフトン通りのカフェで昼食を食べることにした。今日は昨日とは違うカフェでベジバーガーとコーヒーを注文。雰囲気の良い店で、食事も美味しかった。だが、いかんせん高かった。そのお店が特別高かった訳ではなく、ダブリンでは外食自体が高くつくらしい。
旅は始まったばかり、これからのことを考えると、僕にはヌテラチョコとインスタントコーヒーで充分かもしれない。ちなみに、カフェの店員さんは、やはりフレンドリーだった。
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