アイルランド留学④ 「ファティマ」

ヴィア・フランチジェナ

 アイルランドへ来て、あっという間に1週間が経とうとしている。学校の授業に関しては、ついていけていない、というのが現状だ。授業内容を理解するスピードが遅いし、そもそもただ受け身で聞くだけで、自分から考えていない時間が多い気がする。

 小テストでも単純なミスが目立つなど、勉強に関してはとにかく良いところがなかった。だが、自分の弱点は言い換えれば伸び代。弱さを認識できたなら、きっと変われるはず。とにかく、もがきながらでも進み続けるしかない。

 放課後はファティマとフランソワと街に遊びに出かけた。しばらく街中をぶらついた後、カフェでお茶を飲むことになった。テーブルに着くと、僕らはそれぞれ勉強したり、おしゃべりしたり、食べ物をつまんだり、まるで学生時代に戻ったかのような時間を過ごした。

 社会に出てから学生に戻るというのはとても新鮮な気分だった。それに今は当時学生だった時よりも、何倍も真剣に勉強をしている。これまでの僕は、勉強がこんなに生産的で楽しいことなのだと知らずに生きてきた。

 ここダブリンで、僕は学生に戻れたのではなく、「ようやく学生になれた」のかもしれない。始めるのに遅すぎることはない。これから多くのことを学んでいきたい。

 今日はとにかくファティマに驚かされた。彼女の行動力にだ。

1 . 彼女はその場にいる人となら、知っていようがいまいが誰とでも話す。店の店員さんはもちろん、立ち寄った美術館の警備員さん、カフェで隣に座っていた客など、相手がネイティブでも英語を使うことに対してためらいなど一切ない。

2 . 彼女はどこにでも突撃する。一緒にぶらぶら歩いていていると、美術館なり、カフェなり、隙あらばどこにでも突撃して行った。気づいたら一緒に歩いていたはずのファティマがいない、ということがよくあった。

 カフェでお茶していても、「ちょっとトイレ行ってくる。」と席を立ち、戻って来たと思ったら「ついでに観光ツアーに申し込んで来た!」ということもあった。とにかく即決断、即実行。

3 . 今日授業の教材で出てきた「Never leave without a sale」(相手に何か売るまではその場を去るな)という言葉を、実行していた。

 カフェで隣の席になったお客さんから、近場の安い宿の情報を聞き出していた。

僕はそんなファティマからアドバイスをもらった。

 「素早く考えなさい。」
 「難しいけど、どんどん話す練習をしなさい。話すことが勉強だよ!」
 「毎日、3人の人に自分のことを話しなさい。」

 彼女はそれらのことを有言実行している。というか、言う前にやっている。とにかく早いのだ。行動力があるだけではなくて、美しいものを見る目を持っているし、食べ物をおすそ分けしてくれる。50代だと思われる彼女は、若者達以上に物事に対して積極的だった。

 授業で打ちのめされ、友達と遊び、友達から学ぶ。なんと濃い1日だろう。カフェを出ると、街角のパブに寄り、僕らはギネスで乾杯した。最後はあまり学生らしくなかったかもしれない。

本場のギネスはパンチがある。

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