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【サンティアゴ巡礼】- ルピュイの道 – 3日目-3

サンティアゴ巡礼記

Saint-Privat-d’Allier → Saugues 19km

 15時過ぎにSaguesに到着。丘の上から見下ろすとSaguesは大きな町に見えた。そこにはこれまで通過してきた村の何倍もの建物が立ち並んでいた。

Saugues到着。

 町へ入り、トラクターの修理工場で働く男達の横を通り過ぎて進むと、予約していた(マイケルが)今夜の宿に到着。入り口の門を開けて建物のある敷地内へ入ると、ちょうど建物のドアが開き、女性とリードに繋がれた犬が出てきた。

これから少し大きな町に突入する時はいつもドキドキする。

 どうやら彼女がこの宿のオスピタレアで、これから犬の散歩に出ようとしていたところらしい。僕らは挨拶を交わすと中へ招き入れられた。Le Par’iciはとても居心地の良いジットで、宿の中心にある広いダイニングルームにいると安らぎを感じられた。

 風雪の中を歩いてきた分、雨風をしのげる屋内にいられる安堵感は大きい。オスピタレアのシンチャに一通り宿の中を案内してもらうと、クレデンシャルにスタンプを押してもらった。彼女は小柄でチャーミングなフランス人女性だった。

 ダイニングテーブルに座り温かいお茶をいただきながら、僕らは彼女にこの先の宿についての相談をし始めた。彼女は昨夜の宿のオスピタレア同様、親切にも明日の宿を電話で予約してくれた。ありがたい。親切なオスピタレア達と計画的なマイケルのおかげで、僕はパリに戻るまで野宿せずに済みそうだ。

 マイケルの「今夜の宿で必ず次の宿を確保する作戦」はとても良い。世界中から巡礼者を受け入れているジットのオーナーは英語が話せる可能性が高い、彼ら彼女らに自分たちの今後の行き先を英語で伝えて、まず行程を練る。その間に点在するジットで冬の時期でも空いているジットに目星をつける、そして宿の主人にお願いしてフランス語で予約してもらう。

 もちろん、これはお願いする相手の善意あってのことなので、最初から期待してそれ頼みになりすぎるのもよくないと思う。マイケルはあくまで相手を十分に尊重した上で、相談していた。

 宿に到着後にやるべきことを全て終えると、僕らは夕食までゆっくりした。部屋はベッドが3つ置かれた個室で、それぞれベッドを選ぶとマイケルは電話をしに行って、僕はベッドでゴロゴロしていた。

見た目は簡素だが寝心地の良いベッド。

 しばらくして、僕はシンチャにこの町のATMやらスーパーの場所について尋ねた。生活用品と資金の補充が必要だと感じたからだ。この町には幸いどちらもあって、どちらもここから歩いて行ける距離らしい。できることなら今日済ませておこうと思い、早速準備をして出かけることにした。

 だが、いざ宿を出発しようとしたら外は雪が降っていた。今日ここまでの道中で歩いている時に降ってきた、ハラハラと舞うような優しい雪ではなく、ザアザアと吹雪いている。買い出しはやむなく断念。

 そのことをマイケルに伝えると彼はスマホに目を落として、明日以降の行程と宿泊先のことについて調べながら、顔色ひとつ変えずに、「ドイツにはこういう格言がある。『悪い天気なんてない。ただ着る服を間違えているだけ』」と言い放った。それがさも当たり前であることのような感じで。

 彼ではタフで精神的に成熟していると思う。これまで様々な難しい状況を経験して乗り越えてきたのだろう。状況を受け入れて変えようとせず、自分の対応を変える。変えられないものと変えられるものを知る。その言葉が重かったのは、それを体現するような巡礼を彼がここまで続けてきたからだと思う。

 僕は買い出しを諦めて、シャワーを浴びてゆっくりすることにした。洗濯に関してだが、僕は今回のカミーノで洗濯をしなかった。堂々ということでもないと思うが、何か参考になれば幸いだ。理由はいくつかあった。

 目的地への到着が遅く、夕食とシャワーだけで済ませて就寝という時間的、体力的制限のある日々が続いたこと。冬だったので汗をそこまでかかずに済んでいたこと。洗ったとしても乾かないであろうと考えていたこと。そもそも洗濯機をあまり見かけなかったような気がすること(これに関しては僕の不注意があると思う)。

 夕食の時間が近づいてくると、マイケルとダイニングでビールを飲んだ。ダイニングルームに置かれた冷蔵庫にはビールが何本も入れられており、後精算で自由に飲んで良いらしい。僕らは乾杯すると他愛のない話をして過ごした。

Chillax time .

 僕は昨日に引き続きお酒を飲んだ。昨日気のいいフランスの男達と一緒に働いて汗を流し、ビールで乾杯した。プシュッと栓を開けてから、僕はこの旅ではお酒を飲もうと決めた。それが必要なことのように思えたからだ。マイケルはしばらくするとまた電話するためにリビングを出て行った。

 キッチンでは、オスピタレアのシンチャが夕食の準備を始めた。夕食までの間に彼女とも話をさせてもらった。彼女は最近このジットを始めたらしい。去年は1,300人の巡礼が宿泊したのだと教えてくれた。「今年も同じくらいたくさんの人に泊まってもらいたい。これは仕事ではなくて、私は人をもてなすのが好きなのよ。」と目を輝かせて教えてくれた。

 それは素敵なことだし、冬の閑散期でも宿を開けて待っていてくれるという彼女の献身性のおかげで、僕らは暖かい場所で温かいご飯が食べられる。ありがたいし、尊いことだと思う。電話から帰ってきたマイケルが2本目のビールを飲み始めると、まもなく夕食の時間になった。

 夕食はコースになっていて、まずスープを頂いた。緑色の野菜スープは温かくて優しい味がした。添えられたバゲットにも良く合う。僕もマイケルもそれをぺろっと平らげてしまった。

心の底からホッとさせてくれる野菜スープ。

 次にラタトィユが出てきた。料理に無頓着な僕ですらも一度は名前を聞いたことのあるフランスの名物料理。野菜を使った煮込み料理だ。トマトの色なのだろう真っ赤なシチューのような煮込みをコメの上に乗せて食べた。

食べれば食べるほどに食欲の湧く、魔法のラタトィユ。

 ほんのりバターを絡めたような味付けの米とラタトィユの組み合わせは絶品だった。美味しすぎて、僕らはバクバク食べてしまい、2人ともおかわりまでした。大きな鍋に作ってくれたラタトィユは全て食べ尽くしてしまった。満腹だったし、大満足だった。

ラタトィユの余韻に浸っていると、今度はデザートを出してくれた。もう至れり尽くせりた。いちごが乗り、チョコレートがかかったムースはしつこくない甘さで、これもペロッと食べてしまった。最後はコーヒーまで淹れてくれた。完璧だった。

1日の終わりのご褒美にこれ以上のものはない。

 僕らは贅沢な時間を思う存分楽しんだ。シンチャは僕らが到着してから、夕食を平らげるまで常に笑顔でもてなしてくれた。ありがたい。彼女のこれからの人生に大きな祝福あれ。

 20時頃に僕らは解散した。シンチャは就寝、マイケルはまた電話、僕はベッドで日記を書いた。明日は長い距離を歩くことになるので、朝は7時には朝食を食べて8時には出発予定だ。

結構疲れていたのだろう。気づけば寝ていた。

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